2011/08/14 ~2日目後半~



開城から平壌へ。
ガイド達と運転手に持参した飴の純露を2個づつ渡す。
男Gに「じゅんろ、と読みますか?」と聞かれ「そうです」と答えてしまった。
後で知ったが、「じゅんつゆ」が正式名。飴は食べてくれたが、特に感想は無かった。
美味すぎて言葉が出なかった、と思っておこう。


帰り道。後部座席で男Gと私、2人で少し寝る。助手席の女Gは多分起きていたと思う。たまにすれ違う車は軍用トラックか中国人客の観光バスくらい。

のどかな風景。自分の田舎の奈良もこんな感じです、と伝えた。高速道路の付近には民家が見当たらないが、高速道路脇に時々小さな子供達が居た。一体どこから来たのだろうか。



平壌へ到着。男Gの勧めで、高麗ホテルと並ぶ一流ホテルの羊角島国際ホテルを見学。おみやげを売る本屋を案内するという。さて、ここで無事トイレへ行けてほっと一息。

本屋には金日成主席の書籍や朝鮮音楽のDVD等が売られていた。金日成主席の本を買おうとしたが、残念ながら中国語と英語版だけしか無く日本語の物は無かった。日本人客は少ないので置いていないのかもしれない。ロシア語の冊子もあって、男Gはその本の内容を少し読んで説明してくれた。彼はロシア語もちょっと読めるとの事。




錦繍山記念宮殿(クムスサンと読む)。金日成主席のご遺体が安置、保存されている共和国の聖地。私は中まで入っていないが参拝は事前予約と正装が必要。




















再び凱旋門。




















男G < この川は何という川か覚えていますか?
私  < デドンガン(大同江)でしたっけ。
男G < 普通江です。















高麗ホテルへ帰還。しばし自室で休憩した後、ホテルから歩いてすぐの星群(ほしむれ)のレストランへ。



自室からの風景。

高麗ホテル近辺。



私  < なんでこんな所に地下道が(街中いたる所に)。
女G < 道路で交通事故があると危ないですから。
私  < なるほど。(※ほとんど車が走っていないけど、将軍様の人民への愛は計り知れない。)

私と男G、女G、運転手の4人で席に着く。


男G 今日も一日お疲れ様でした。じゃあ、乾杯しましょう。
一同 乾杯!

男G 今回は我々レベルですが、朝日友好を果たしましたね。
そうですね(笑)。
男G 今は近くて遠い国ですが、近くて近い国になればいいですね。
はい。
日本人は毎年何人くらいくるんですか?
男G 去年は160人程来ました。やはり今は中国からのお客さんが多いです。
男G どうしたら日本のお客さんが増えると思いますか?
もっと宣伝してはどうですかね。そもそも共和国に来れる事をみんな知りませんから。(※知ったとしても国交が無いのでやはり渡航は躊躇するだろう。)
男G 今は中外旅行者と307がやってくれているんですけどね。今年は11月にサッカーの我が国と日本との試合がこちらでありますから、
それで日本のお客さんを見込んでいます。サッカーはこちらでもよくテレビで放送されていますよ。
男Gさんは日本に来て打ち合わせとか無いんですか?
男G 中国に朝鮮国際旅行社の支店がありますからそこがやっています。
そうですか。日本語のガイドさんは何人いらっしゃるんですか?
男G 日本部は8人です。今は中国部が人数が多いです。
日本人が来ない時は何やってるんですか?
男G 中国人のガイドやってます。少し話せますから。でも日本人にもっと来て欲しいです。私は日本語のガイドですからね。
そうですか。女Gさんと仕事帰りに飲みに行ったりするんですか?
男G 彼女は・・・、付いてきてくれません。(※ちょっと悲しそう。)
女G 私は飲めないですから・・・
男G 私は飲んでカラオケですね(※・・・と、色々語ってくれた。当然ガイド中はホテルの私と違う別棟にずっと居る。
ガイドの仕事では無い時の話だろう。)


男Gに会社から電話が入り、しばらく中座。


女Gさんも友達と飲みに行ったりするんですか?
女G 行きますよ。友達はお酒が強いですが、私は飲めないですからジュースばかり飲んでいます。(※かわいすぎる。)



イカフライ。ビールに合う。
北朝鮮のイタリア料理
意外や意外、本格的。もしかしたら宅配用ピザを中国から輸入しているのかもしれない。日本のその辺の喫茶店で出すピザよりは断然旨い。


日々の楽しみは何ですか?
男G 今は、子供ですね。(※幼稚園くらいと言っていたような。)
男G 家に電話する時も、妻が電話に出るより子供の方が嬉しいです。
そうなんですね(笑)。
男G 子供がいつもお菓子ばっかり食べて・・・(ぶつぶつ
そうですか。お子さんはどういう方向に育てるとかあるんですか?
男G 自然科学を学ばせたいですね。これからはテクが無いと。(※テク=Tecnique:技術か。)
なるほど。



緑豆のチヂミ。ちと油っこい。

鍋。あまり辛くはなく、あっさり。具は卵やら有頭海老やら野菜やら色々。もうこれが出てきた時点でお腹一杯だったのだが、少し頂いた。ちょっと残りそうだったが男Gがガツガツ食べてくれた。ここは私の払いなので、気を遣ってくれたのだろうか。鍋の奥に見えるのは運転手さんで、右胸にしっかり金日成バッジ。


食べ終わって、店を出る。小さい店だったが、他にも地元のお客さんが何組か居た。
店内で流れていた音楽が気になって・・・

これは何という曲ですか?
男G あぁ、パンガプスムニダですね。


曲名:パンガプスムニダ by ポチョンボ電子楽団

パンガプスムニダは「お会いできて嬉しいです。」という意味。
307インターナショナルからツアー申し込み時に送られてきた北朝鮮観光DVDのBGMだった曲で、
独特で軽快なフレーズは一度聞くと耳から離れない。


食事を終え、ホテルへ戻る。



自室にて、明日の天気予報を観る。何が書いてあるかは読めない。

半島全域を表示している。あくまで共和国の領土は朝鮮半島全域という事を意味しているのだろうか。



寝ながらぼーっとテレビを眺めていると、部屋の電話が鳴る。


(ガチャッ)はい
もしもし

ガイドの男Gです。
あぁ、どうもどうも。今日はお疲れ様でした。
男G お疲れ様です。Mさん、ドライヤーの事ですが、フロントに入れさせましょうか?
あぁ、使いませんのでほんとに大丈夫ですよ。(※なんと、昨日に部屋に無いと言ったのを覚えていた!)
男G 本当に大丈夫ですか?
ケンチャナヨ(大丈夫です)。
男G そうですか。何かあったら言ってください。
アルゲッスミダ(わかりました)。カムサハムニダ(ありがとうございます)。



もう自分は忘れていた事だったし、こんな細かい事まで覚えていてくれて旅行中もずっと体調を気遣ってくれたガイドさん達。
日本より遥かに生活が苦しい国で、ならず者国家、悪の枢軸と呼ばれている国の人が、ここまでの気遣いをしてくれた事が
意外だったし、全然期待していなかっただけにとても感動した。日本でもここまで気遣いできるサービス業の人はそうそういないだろう。
正直、国全体が悪者と思っていた自分のとんでもない勘違いと頭の悪さに心底恥じた。

比較的恵まれている国で何不自由無い生活ができる日本において、自分自身も一会社員、一技術者として
ここまで徹底したプロの仕事ができているだろうか。豊かさにあぐらをかいで人間的に成長が止まっているのではないか。
自問自答の夜となった。

水だけで\1000円近く取る都内の某三ツ星レストランで「さっぱり系のノンアルコール」とオーダーしたら、
私の好みも聞かずに嫌いなグレープフルーツのカクテルを持ってきたあの給仕に、最高級ホテルで瓶ビール
1本\100円の北朝鮮で一生懸命働くこのガイドさん達の熱心な仕事ぶりと気遣いを見せて思想改造してやりたい。






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