2019/01/11　～2日目⑤～

楽園百貨店到着。

ネオンできらきらしている。

平壌ラーメン店、と書かれている。

つ、ついに来た・・・。

中に入ると、居た。あの伝説の料理人、藤本健二氏！
坊主っぽく短く刈り込まれた頭にゴツめの金時計、ぱっと見は
いかつい頑固職人といった感じで正直やや近寄り難い印象。
我々以外に客は居ない。

藤本	＜	いらっしゃい、どこから来たの？
私	＜	＊＊です。
藤本	＜	へぇ、＊＊から。

という簡単な挨拶に始まり、男G6が持ってきたメニューを見て悶絶。
予めオーダーして貰った50$の寿司セットの写真が寿司＋刺身山盛り！！
おまけに大盛りサラダ付き。

私	＜	こ、これは食べきれないですよ・・・。
男G6	＜	もう頼んでしまいました。
私	＜	えぇぇ・・・。

もはやラーメンはたぶん無理・・・。私はカウンターに着席し、
ガイド2人と運転手は後ろのテーブルに着く。しれっとデジカメを
手にした瞬間、後ろの席から↓

男G6

＜

料理中は撮らないようにしてくださいね、後で一緒に撮りますから。

と、やんわり一言。この男なかなか鋭い。
そんな中、黙々と料理に取り掛かる藤本氏。頑固職人は時に話しかけるとキレる人も居るし、
声かけを遠慮しつつ手際の良い調理の様子を見ながら無言で静かな時間が過ぎていく。
きっと偉大な将軍様もかつて同じ光景を見たに違いない。

私	＜	ソガリってありますか？
藤本	＜	あるにはあるけど、なかなか捕れないよ・・・。あれは美味いよ。
私	＜	そうですか。共和国はどこの魚が美味しいですか？
藤本	＜	元山だね、今日も活きの良い貝が入ったよ。

という、薄い会話をしながら待つ。
この寿司店、現地人の若い男性の弟子がいて、藤本氏が「バカヤロー」と言いながら
叱り付けているので余計にいかつい（笑）。TVでそんな印象は無かったが案外激しめの
性格なのか、それとも弟子の教育には厳しいのか、なんなんだろう・・・、と
思案していると、カウンター越しに出来あがった料理が。

美味しそうだが、多すぎ。

平壌で本格的な日本の寿司。

結構な量で狼狽していると、給仕の若い女性が山盛り千切りキャベツのサラダを運んできた。
藤本氏の著書で見かけた顔で、朝鮮語で聞いてみる↓

私	＜	日本語できますか？
女	＜	できません。

後で藤本氏が名前で呼んでいたので、やはり娘さんの正美氏だった。
その後、調理を終えた藤本氏がカウンターから出てきてなんと私の横に着席。

私	＜	以前はよくテレビでお見かけしましたよ。もう出ないんですか？
藤本	＜	また帰国したら出るよ、辺真一の野郎が何も知らないのにテレビで嘘ばかり言ってるからこらしめないと。
私	＜	（笑）。ところで最近の元帥様は色々会談したり大変ですね。
藤本	＜	元帥様は世界一お忙しいお方だから。
私	＜	そうですか。
藤本	＜	安倍さんはなかなかこちらに来ないけど、日朝関係のために私にできることなら何でもやるよ、ヨロガジ（色々）ね。私に考えがあって・・・（略

この話は本になるかもしれないので伏せるが、彼なりの解決法で、実現すれば
日朝会談以上の話題性になりそう。実際なかなか難しいとは思うけど、いつか
その日が来ることを願いたい。

藤本	＜	朝鮮学校とか公演だって、ヨロガジね、呼ばれたらどんどん行きたいし。
私	＜	なるほど、こちらでの生活はどうですか？冬は冷えるでしょう。
藤本	＜	ほんと寒いよ、こっちは。
私	＜	博打もできないでしょう？
藤本	＜	こっちは無いからね。昔はマカオとかでよくやったんだけどね。

確かに在日の方と同様、たまに簡単な朝鮮語が混ざる。

そんな話をしつつ、おもむろに店の奥からスマホを取り出し、たかはしに来た海外の
お客の写真を見せてくれた。アジア系のお客が多いが、台湾からのお客が多いらしい。
日本人客も何人か居た。

私	＜	そういえば、将軍様から貰った金の指輪を付けてらっしゃらないですが、どうしたんですか？
藤本	＜	あれは・・・（略

おぃおぃっていう話だったが、皆さんが平壌に行ったら聞いてみると良い。
それでよく今まで生きてこれたな、と思えるエピソード。ネタバレは控える。

私	＜	高英起って知ってます？
藤本	＜	高英姫？それは将軍様の・・・。
私	＜	いや、高英起です、DailyNKの。
藤本	＜	知らないな。
藤本	＜	こちらは何回か来てるの？
私	＜	はい、5回目です。前に安山館で鰻も食べました。
藤本	＜	そう、鰻だったらウチでもっと美味く作れるよ。
私	＜	えぇー、それは今度楽しみですね（※著書にも鰻を将軍家に振舞う話があった）。そういや築地のラーメン井上は火事で焼けてしまいましたがご存知ですか？
藤本	＜	知ってるよ、ほんと残念。そこが火元でしょ？どうしようも無いね・・・。けど井上の味はいま平壌で生きてるからね！
私	＜	ちなみにタバコはどんなのがお好きですか？
藤本	＜	自分はメンソール（※超意外、セブンスターは彼には不要）。
私	＜	お酒もお強いのでは。こちらでは焼酎が人気でしょう。
藤本	＜	焼酎飲まないよ、あれはどうも昔から苦手で。
私	＜	酒については昔は将軍様からかなりの無茶振りだったんじゃないですか？
藤本	＜	潰れるまで飲むっていう飲み方はしないね（※宴会も強制みたいな感じではなかった模様）。 昨日も深夜まで知り合いと飲んでね。
私	＜	配給貰えるんですか？
藤本	＜	無いよ。いま給料貰ってるから。
私	＜	冷麺どこの店が好きですか？
藤本	＜	玉流館も良いけど混むからその店の前にある玉流麺屋に行くよ、そこも美味いよ。
私	＜	そうですか。労働党の宴会場鉄板焼コーナーで仕事をされていましたが、鉄板焼きもできるんですか？
藤本	＜	いや、あれはあそこで働いてただけだから。
藤本	＜	そういや、知ってる？島倉千代子、良いよねあの歌。 日本のケンタッキー、あれ美味いよな（※意外な好物）。

と、食べながら話していると、後ろの席で寿司をつまむガイド達から↓

男G6	＜	すみません、我々はこの後ラーメンを頼みますが、ラーメン食べます？
私	＜	いや、もう食べられません・・・（※お、お前ら・・・（怒））。

私	＜	この店っていつできたんですか？
藤本	＜	ちょうど2年前だから、来月ここで2周年記念パーティやるよ。妻も呼んでね。
私	＜	チクトンリョンの歌を歌う歌手の方でしたっけ。
藤本	＜	そうそう。
私	＜	店はいつまで続けるんですか？
藤本	＜	体が持つ間は頑張るよ。

井上ラーメンではないけど彼らが頼んだ海鮮ラーメンを少し分けてもらった。チャンポンのようなライト豚骨っぽい塩味で結構イケる。 あと彼らはキムチラーメンをオーダーしていたが、井上ラーメンも結構期待できそう。

最後に記念写真タイム、藤本さんは元気そうだった。高橋と呼ぶのか藤本と呼ぶのか聞くと、「どちらでも」との事。

伝説の料理人、遊び人のようで仕事はしっかりでこだわりを持ちつつも、愛嬌があって
どこか憎めないところがあり、あの将軍様が気に入ったのも何となく分かる気がした。

ということで、ガイドに寿司セットで良いかと聞かれたら絶対に断ったほうが良い。
メニューで見た握り寿司盛り合わせが20$なので、寿司20$x4人＋ラーメンx4人＋酒で
120$くらいでいけたと思う。別の知り合いも120$で、150$もしなかったと言っていた。
寿司はほんの一部凍ってシャリついていたネタもあり、全てが天然物ではないようだが
海外でこのレベルの物を食べられれば十分満足、というべきか。

いつになるかは分からないが、井上ラーメンは次回におあずけ。
現在70歳だし、会いたいなら早くいかないと厳しいかも。

金正恩元帥が彼を●さなかったのは、彼を観光大使として置くことでより外貨獲得が
有利になり、なおかつ裏切っても許すという度量の広さを示せて一石二鳥という計算が
働いたような気がしたが、果たしてどうだろうか。






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